体調を崩したとき、
「できれば、最初から大学病院のような大きな病院で診てもらいたい‥‥。」
そんな気持ちになるのも理解できます。
しかし、国の方針により、日本の病院は病状や発症から(ケガをしたり、具合が悪くなってから)の期間によって、その機能が分けられています。そのため、検査や手術などの集中的な治療が終わり、病状が落ち着くと、入院している病院から退院や転院を勧めれられることがあります。
大切なのは、患者の目的にあった医療機関(病院)を選択すること、その支援をすることです。
・病気やけがの発症からの経過日数と予後の見立て
・患者や家族の考えや希望
・主治医をはじめとした医療チームの見解
これらを総合的にファシリテートする力が、退院支援に携わる専門職である看護師やソーシャルワーカー、ケアマネジャーには求められます。
ここでは、転院を勧める際の選択肢となりうる病院の機能を説明します。
病状やけがの程度にもよりますが、急性期医療機関からの退院支援の場合、
以下の病院機能の順番に選択肢を検討することになります。
支援者は、「患者や家族の想い」と「医療側の見解」の間に挟まれ、つらい思いをすることもあるかと思いますが、現実的に選択肢は限られます。
「 限られた選択肢の中で、いかによりよい医療・ケアを受けるか 」
それを共に考えていくが退院支援に携わる専門職の役割ではないでしょうか。
良い支援者(パートナー)に巡り合えるかどうかで、患者の予後・生活に与える影響が大きいと思います。
専門職として、力を発揮したいところですね。
機能1;回復期リハビリテーション病院(病棟)
リハビリテーションを集中的に行い、自宅への退院と社会復帰を目指すところ
脳血管疾患または大腿骨頚部骨折等の患者に対して、食事や更衣、排泄、移動、会話などのADL(日常生活動作)の能力向上による寝たきりの防止と自宅等への退院を目的としたリハビリテーションプログラムを、医師や看護師、理学療法士などのリハビリスタッフ、ソーシャルワーカー(MSW)等が共同で作成し、これに基づきリハビリテーションを集中的に行う病院です。
回復期リハビリテーションの機能だけを持つ病院の他、
例えば4階建ての○○病院の2階フロアーだけがリハビリテーションの機能を持つ病院など、病院側とすれば病棟単位での届出が可能です。
発症から2か月以内に入院をする必要がある他、入院できる期間が定められています。
その他、病気やけがの種類によって、リハビリテーションが受けられる期間が定められているため注意が必要です。
対象疾患 | 入院可能時期 | 入院期間 | |
① | 脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷、脳腫瘍 くも膜下出血のシャント手術後、脳炎、脊髄炎 急性脳炎、多発性神経炎、多発性硬化症 | 2か月以内 | 150日 |
高次高機能障害を伴った重症脳血管障害 重度の頚髄損傷及び頭部外傷を含む多部位外傷 | 2か月以内 | 180日 | |
② | 大腿骨、骨盤、脊椎、股関節もしくは膝関節の骨折 または2肢以上の多発骨折の発症後又は手術後の状態 | 2か月以内 | 90日 |
③ | 外科手術又は肺炎等の治療時の安静により 廃用症候群を有しており、手術後又は発症後の状態 | 2か月以内 | 90日 |
④ | 大腿骨、骨盤、脊椎、股関節又は 膝関節の神経・筋靭帯損傷後の状態 | 1か月以内 | 60日 |
⑤ | 股関節又は膝関節の置換術後の状態 | 1か月以内 | 90日 |
入院期間は、あくまで「 最長 」ということです。
例えば大腿骨頚部骨折術後のリハビリのために転院した場合に、
「転院先の医療機関に90日間入院していなければならない」
ということではありません。
機能2;地域包括ケア病棟(病床)
急性期後の治療やリハビリ、一定期間の療養を行うところ
急性期の治療を終え、自宅や施設に退院する患者に対して準備が行われる病棟です。
次のリストのように入院の目的や対象者は比較的幅広く、入院期間も60日間と定められています。
- 体調不良による治療
- リハビリテーション
- 退院の準備
- 療養
- レスパイト(家族の休息)
回復期リハビリテーションの機能と同様、病院によって例えば4階建ての病院の3階フロアー全体が地域包括ケア病棟の場合もありますが、3階フロアーの一部(310号室と311号室、312号室の計12床だけ)地域包括ケアの場合、病床単位での届出も可能です。
ただし、入院の費用が包括点数(一日あたりの入院費用が固定されている)となりますので、注意が必要です。
機能3;療養病棟(病床)
医学的な管理下で、療養や介護を中長期に行うところ
療養型病棟(病床)は、医療法により長期にわたり療養を必要とする患者のための病床として設定されています。
医療の必要性が高く、リハビリや療養を必要とする人で、病状が安定している方を対象とした病床です。
医療保険対応と介護保険対応(2024年3月をもって廃止予定)があります。
医療保険対応の場合、医療区分2と3に該当し、かつADL区分2か3に該当するなど、退院先の医療機関により条件は異なります。
介護保険適用(介護療養型医療施設)の場合、介護度4または5であることなど、退院先の医療機関により条件は異なります。
入院費用は原則定額制ですが、個室代やクリーニング代等の「その他費用」で、請求額は医療機関により異なります。
機能4;障がい者病棟
重度の障害や難病等のひとが治療・療養を行うところ
重度の身体障がいや神経難病の人を対象に、ADL(日常の生活動作)の維持やQOLの向上を目的とした病棟です。対象の医療機関は、「障害者施設等入院基本料」を算定しています。
入院期間の定めなく入院継続可能な医療機関が多くあります。
次の疾患の人が対象となります。
1、重度の肢体不自由の方(脳卒中後遺症、認知症を除く)
2、脊椎損傷等の重度の障害の方(脳卒中後遺症、認知症を除く)
3、重度の意識障害の方
4、筋ジストロフィーの方
5、神経難病の方
・多発性硬化症
・重症筋無力症
・筋委縮性側索硬化症
・脊髄小脳変性症
・ハンチントン病
・パーキンソン病関連疾患
・多系統萎縮症
・プリオン病
・亜急性硬化性全脳炎
・モヤモヤ病(ウィルス動脈輪閉鎖症)
機能5;緩和ケア病棟
身体や心の痛み・つらさを和らげるケアを行うところ
緩和ケアとは、症状の進行した患者さんが抱える身体的な痛みや不快な症状、不安など、病状の進行に伴う身体的・精神的苦痛を緩和することを目的とした治療やケアを意味します。
緩和ケア病棟(ホスピス)では、医師や看護師、薬剤師、管理栄養士、ソーシャルワーカーなどがチームとして構成され、患者や家族のQOL(生活の質)向上のため、必要な支援を行います。
緩和ケア病棟は厚生労働省が定めた一定の施設基準を満たし、都道府県の認可を受けいている病棟です。
機能6;精神科病院(病棟)
認知症治療(療養)病棟が高齢者の退院支援先となる場合があります
精神科の病院は、精神科のみを標榜している精神科単科の病院の他、病棟単位で運営している病院もあります。
急性期の順に、精神科救急入院料病棟(スーパー救急と呼ばれます)、精神科急性期病棟、精神科療養病棟、身体合併病棟、認知症療養病棟があります。